「超」独学法
AI時代の新しい働き方へ
角川新書, 2018/6/9
巣ごもり需要も相まって、ここ数年「大人の学び」が静かなブームのようです。
昨年ブームを巻き起こした読書猿氏の『独学大全』も記憶に新しいですが、先んじて2018年に出版されたこの新書を今回はピックアップします。
私の「独学観」に少なからず影響を与えた一冊です。
本書は「洗練された筆者の独学モデルからメンタリティやテクニックを学ぶ」といった色合いの強い一冊です。
「手広さ」や「普遍性」よりも「論点の明確さ」「テクニックの使い勝手の良さ」で一点突破するタイプとも言えるでしょう。
『独学大全』のような網羅度・完成度の高い本に対して、本書はむしろ「フォーカスを絞った」本であることが妙味となっています。
コンセプトは「『学び続けること』が最も大事な『能力』となる現代社会において、社会人たる我々はどうやって勉強していくか」というもの。
本書の中身をざっくり総括しますと、「能動的な勉強」として独学の優位性を提示し、「独学を上手く継続する方法」を述べ、そして「独学の不利な点」にも目を向ける……といった構成になっています。
中にはあまり重要でない社会批判や自分語りも混ざっているので、多少散らかっている印象も受けますが、独学する上での「メンタリティ」や「ツール」そして「注意点」といったクリティカルな話が一冊の中に凝縮されていると感じました。
野口氏は経済・社会系の論壇で活躍されている方なので、独学の例も文系知識に寄っていますが、自然科学や大学受験科目全般でも通用するハウツーが多いです。
巷に出回る「勉強本」となると、同じ内容を何度も繰り返しているだけの本や、単に難関大学に受かっただけの大学生の合格体験記に過ぎないような本が大多数を占めていますが、本書はそれらと一線を画する「勉強本」と言えましょう。
また、著者の野口氏は本書の対象を『学校教育を終えて仕事に携わっている方々』としていますが、本書の射程は決して「社会人」に留まらないと私は思っています。
以前「大学は独学するために必要なものが揃っている」という旨の記事でも書いたように、私は「大学生活は独学を始める絶好のチャンス」と考えているからです。
「独学」と「学校教育」は決して相反するものではなく、相補的に活用できるはずです。
大学の学部教育を受ける中で、授業と無関係に自分の興味を「独学」で掘り下げてみたら、何らかの形で将来自分の「本業」の役に立つ機会があるかもしれません。
また、日本の大学には一般的に「副専攻(minor)」という制度はありませんが、独学によって「自主的な副専攻」を設定してみるのもいいと思います。
何と言っても大学は独学環境としては最高ですし、「独学の副専攻」という視点が増えることによって、自分の「本来の専門」への考え方も豊かになっていきます。
「独学で『副専攻』を学んでみる」
これは大学生にも社会人にもオススメしたい「学びの遊び」です。
★NEXT STEP
独学大全
絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法
ダイヤモンド社, 2020/9/29
こちらの記事でも触れました。
個人的な経験に基づいた成功体験談レベルの本が多い勉強本界隈で、先人たちの蓄積に基づいた知見を系統的にレビューした稀有で貴重な本です。
少なくとも向こう十年は「学び方の本」でこれを超える本は現れないと思うので、未所持の方は安心して購入して良いと思います。
一部はすぐに取り入れて、一部はふと思い出した頃に試してみるつもりで、何年もかけて価値を引き出すタイプの本です。
狐太郎
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