お前は今まで祈った神の名前を覚えているか?【新書読書】

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島田 裕巳

なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか

幻冬舎新書

2013/11/29

 

目次
日本の神々と神社
八幡―日本神話に登場しない外来の荒ぶる神
天神―菅原道真を祀った「受験の神様」の謎
稲荷―絶えず変化する膨大な信仰のネットワーク
伊勢―皇室の祖先神・天照大御神を祀る
出雲―国造という名の現人神神主の圧倒的存在感
春日―権勢をほしいままにした藤原氏の氏神
熊野―浄土や観音信仰との濃厚な融合
祇園―祭で拡大した信仰
諏訪―古代から続くさまざまな信仰世界
白山―仏教と深くかかわる修験道系「山の神」
住吉―四方を海に囲まれた島国の多士済々の「海の神」

 

今年最後の更新ですので、今日は季節モノを。

 

日本人というのは面白いもので、大晦日には「除夜の鐘」で「煩悩」を払ったかと思えば、次の日には「神社」へ「初詣」に行きます。(コロナ下では例年より少ないでしょうが)

「除夜の鐘」は明らかに仏教行事で、「初詣」では多くの人が神社へ参詣するわけですが、これらをシームレスに「年末年始の慣行行事」として捉えるのが一般的かと思われます。

というか私も、さっき「これ午前零時で宗教変わってね??」って気付いただけだし。

ついでにさっきググったらこんな記事も見つけちゃいましたが、これなんかまさに仏教の話(除夜の鐘、煩悩)と神道の話(年神、稲の神)がナチュラルに共存している好例ですね。

大晦日の意味を知っている? 由来と歴史から学ぶ、大晦日の過ごし方
「大晦日」とは12月31日を指す言葉で、もとは30日を指す「晦日」からきている。一年の締めくくりでもある大晦日とはどんな日なのだろうか?その由来と歴史から、大晦日の過ごし方について見ていこう。

 

そんなわけで、こうした「多数派の日本人」の無節操さを「無宗教」と揶揄する向きもありますが、確固たる思想や理念を持って既存の宗教的な思考を排する「キリスト教圏でいう無宗教」と「平均的な日本人の思想スタンス」を同一視するのは、私はちょっと違うかなと思ったりします。

(余談ですが近年アメリカでは無宗教が絶賛増加中らしいですね。近代化の波を感じる)

「今日食べた夕飯が何だったか覚えていない」ことと「今日は夕飯を食べていない」ことが全く別の事象であるように、多くの日本人は「宗教と共に生活しているが、それをあまり自覚していない」というのが本当のところなのではないかと。

翻って、「日本人は無宗教だ(信仰を持たない)」と言及するとき、そこには無意識に「キリスト教的な信仰のあり方」を基準にして「宗教」や「信仰」という概念を適用しようとする欧米中心主義が潜んでいる……とも言えるかもしれません。

(この指摘は、下で紹介した『お稲荷様って、神様?仏様?』にも述べられています)

 

 

ここまで全部前置き。

今日は「書評」と言うより「ブログ」気分の記事なのでご容赦下さい。

 

そんなわけで、私たち日本人の多くは、「知らないうちに」年中行事や生活空間の中で信仰に触れています

その最たるものが「初詣」だと思うのです。

皆さんは今までに自分が手を合わせた神社で、「何という名前のどんな神様に祈ったか」をどのくらい把握していますか?

 

恥ずかしながら、私は今まで年中行事で行ったことのある神社(ギリギリ片手で収まらないくらい)の祭神を思い浮かべてみたところ、「〇〇八幡」と名の付く神社の「八幡神」と、狐が目印の「稲荷神」以外は全く思い浮かびませんでした。

しかも「稲荷様」はともかくとして、「八幡神」については名前以外に何も知らないときた。

「南無八幡大菩薩」とか俵藤太も言ってるけど、「何で菩薩なの?」とかね。

 

ここで、今週の本『なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか』に話がやってきます。

本書によれば、「八幡神」というのはしっかりした文献(記紀など)に裏付けられていない出自不明の神で、それが応神天皇と習合したりしたせいで朝廷からの扱いが重くなり、続いて武家からの信仰も篤くなり、そして仏教の弥勒とも習合されながらなぜか民衆の間にちゃっかり根付いちゃった……という感じのようです。

すごく雑に要約してしまったので、一応「なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのか」の回答に相当する部分を本書から引用しておきますね。

八幡神は、本来は記紀神話にも登場しない異国の神でありながら、応神天皇と習合することで皇祖神としての地位を確保し、朝廷の信仰を集めただけではなく、武神として朝廷を補佐した武家の信仰をも集めることとなった。
 最終的には、庶民層にも八幡信仰は広がり、各地で一般の民衆が八幡神を勧請して、地域の氏神として祀ることに発展していく。八幡神を祀る神社がもっとも多いのは、そうした歴史を経てきたからである。

ということらしいです。

これだけ読んでも「分かったような分からないような」感じしかしないと思うので、よかったら本の中身も読んでみて下さい。

ただ、タイトルになっているからと言って綺麗な「回答」らしいものがあるというわけではなく、結局全部読んでも「色々な側面で社会の流れに乗っかって広まった神なんだな」くらいの印象になるかと……。

「韓国の神だった!」とか言ってる部分は正直かなり憶測混じりなのであんまり相手にしなくていいと思います。「八幡信仰に対応しそうな何か」が半島や大陸にあるならまだしも、そういう事実の指摘も無いので。

 

本書では、この「八幡信仰」のほか、日本でメジャーな存在となっている「伊勢信仰」「天神信仰」「稲荷信仰」などについて、その由来と祭神について解説しています。

「そういえばこういうのが名前に入ってる神社ってよく見るなって思ってたけど、そういうことだったのね」と納得できた部分がかなりありました。

「北野天満宮」が菅原道真を祀っていることは流石に知っていましたが、「〇〇天神」というような「天神様」が大抵は菅原道真を指しているということなんかは本書を読むまで知りませんでした。

この本を読んだあと、今までに参詣したことのある神社をググって、「これって有名なあの全国チェーンのローカルブランドだったのね!」と膝を打ったりしました。

 

とまあそんな感じで。

本書は「なぜ八幡神社が日本でいちばん多いのかを解説する本」というより、「日本のメジャーな派閥の神社史を解説する本」としてよくまとまっており、この点で良い入門書だと思います。

今のところは初詣はあまりオススメしにくい情勢ですが、「普段自分が何の神にお参りしているのか」についてちょっと詳しくなってみると、次に神社に行く機会が楽しみになると思いますよ。

 

余談ですが、『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』がヒットしてからというもの、この手の『なぜ~なのか』系のタイトルって新書にすごく多いですよね。

その割には、中身を読んでも「なるほど!そうだったのか!」っていうほど切れ味のある「解答」が無かったり、本全体のテーマとあんまり関係なかったりすることが多くて、タイトルの付け方としてすごく残念な気持ちになります。

「新書はこういうタイトルつけときゃ売れるんだよ!」って編集からプッシュされて「無難なタイトル」として思考停止で名付けられたのかなーと。

それにしても本書の「最強11神社」っていうサブタイトルはノリが罰当たりすぎて笑っちゃいましたが。

 

 

★NEXT STEP

支倉清, 伊藤時彦

お稲荷様って、神様?仏様?
築地書館

2010/10/14

 

神社で祀られることの多い対象を解説している点では同じですが、こちらの本で紹介しているのは仏教にゆかりのある稲荷・地蔵・観音・不動といった神々。

神仏習合の流れでこうした面々も神社では祀られております。

フィールドワークの部分は割とローカルな話でもあるので、東京のローカル地理がわかる人だけ愉しめばいいと思う。

 

三橋 健

イチから知りたい! 日本の神々と神社
西東社

2019/2/6

 

ここまで紹介してきた本が「神社と神道の歴史」を解説しているのに対し、こちらの本は「神社や神道の文化・教え」の「中身」を教えている本です。

カラーで図が多いので、さっぱりわからない用語を一通り知るにはいい本だと思います。

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木村勝哉

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