「大学」は「最高に贅沢な独学のツール」だと思っておくと良い【新書読書】

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田中 研之輔

先生は教えてくれない大学のトリセツ

ちくまプリマー新書, 2017/4/6

 

 

3月は進学と卒業のシーズンです。

Twitter等でも続々と進学先が決まった受験生が目立ち、めでたい雰囲気ですね。

 

散々言われていると思いますが、「高校→大学」での環境変化は非常に大きいものです。

この差分に比べれば「大学の偏差値がいくつ高い/低い」なんて違いは誤差みたいなもんです。

 

そして、

「学びのスタンスが根本的に変わる」と言う大人は多いけど、具体的にどうすりゃええねん!

という声に対する一つのアンサーが本書です。

 

・「講義」を有効活用するにはどうしたらいいか

・「プレゼン」や「レポート」をどう位置づけるか

・「机に向かう勉強」から「対人的な学び方」への転換

などなど、今まで机上での受験勉強を中心にしてきた高校生・浪人生が、これから大学という学習環境をフル活用する上で知っておきたいポイントが詰め込まれています。

 

個人的に「これは確かに大事だけど盲点になってるなぁ」と思ったのは「質問の重要さ」への言及。

中学や高校では「物分りの良い学生」が「賢い」とみなされる風潮もあり、「何か質問はありますか」と聞かれても「優秀な学生はすぐに理解するので質問する必要が無い」というのが平常営業ですが、これは大学以降では全く逆になると私は思っています。

「賢くて授業を理解している学生」ほど、「理解力と自発性を持つが故に質問を出せる」ということですね。

「一を聞いて十を知る」から「一を知って十を聞く」へ、「頭の良さ」の転換がある。

さらに言えば、「研究」というのも「自分で質問を作り、その質問に答える」という営みですしね。

「質問を出す能力」の鍛え方に具体的に言及しているという点だけでも本書を評価したいです。

 

なお著者が私立文系教員ということで、基本的に文系の学部卒就活コース前提で話されています。

なので、後半の「バイト事情」「就活事情」「講義事情」あたりは(当てはまらない人にとっては)あまり参考にならないかもしれません。

しかし「バイト」と「インターン」には言及しているのに「サークル」に言及していないあたりとか、ちょっとその辺のバランス感覚はよく分かりませんでした。サークルって学生視点ではバイトくらい大事じゃないですか?

いずれにしても、前半は一般性の高い話なので、どの学部の大学生にとっても有用なはず。

 

 

ここからはかなり個人的な所感です。

「大学での学び」って、極論すると「凄く贅沢な独学」なんだと思います。

・「知りたいという欲求」を自分で発生させ、それを起動力にしろ

・自分で「問を立てる」ことから学び始めるのが有効

・「アウトプット」を意識して勉強しよう

・「文献」を適切に探して選んで学ぼう

これは上記の田中氏の著書で言及しているポイントを要約して抜き出したものですが、これって読書猿氏が『独学大全』で強調している要点と驚くほど重なっているんですよね。

 

大学を「学びの場」として上手に活用するためには、実は「独学」のノウハウが役に立つ

というのが私の印象。

そして、逆のことも言えます。

大学で「上手に学ぶ技術」を身に着けると、それは「独学の基礎」として一生役に立つ。

ということです。

 

「大学での学び方」と「独学」には共通点が多いと書きましたが、一方で差異もあります。

・「必修講義」のように「一つのテーマを満遍なく学べるパッケージ」が存在する

・教材の選び方や学習方針について相談できる教員や先輩がいる

・アウトプットにフィードバックをくれる学友や教員がいる

・学術書・教科書の充実している図書館・書店が敷地内にある

……一度独学を経験すると、これらが如何に恵まれた条件か分かります。

こう考えると、大学って「学校」というよりは「極めて恵まれた独学環境」と言えないでしょうか。

 

私は、「講義は価値があるんだから全部ちゃんと出席しろ」なんて思いませんし、「学生ならバイトやサークルにかまけず学問に打ち込むべきだ」なんて言いませんし、「今どきの学生は大学を苦行かレジャーランドだと思っていて情けない」なんて情けない愚痴をこぼそうとは思いません。

ただ、「大学という最高のサブスク独学支援サービス」に加入していられる期間は、人生のうちで極めて限られていると思うので、せっかくならばそこで「使える武器」を拾っていくのが良いんじゃないかなぁ……という見解です。

 

ちょっと長くなりました。

今回は半分が私のボヤキでしたが、ここらへんで切り上げるとしましょう。

 

 

★NEXT STEP

読書猿

独学大全
絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法

ダイヤモンド社, 2020/9/29

 

今回のこのコーナーはこの本をおいて他にないだろうな、という感じ。

上記で「独学と大学のノウハウは非常に共通する」と書きましたが、具体的な独学のメソッド紹介において本書は他の追随を許しません。

受験勉強から一転して「学び」の大海へと放り出された人にとって、本書は救いとなりえます。

全部読破しようとしなくてOK。目次を見て気になった項目を読んで、「使えそうなら取り入れてみる」くらいで良いでしょう。

デカくて立派なので紙書籍で買いたい人が多いようですが、私は検索性重視で電子版を使ってます。

リファレンスが非常に充実しているのも素敵ポイント。

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木村勝哉

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