【書評】 図説 世界の文字とことば

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町田 和彦(編):

図説 世界の文字とことば.

河出書房新社, 2014/8/7

 

 

BACKGROUND ――対象

世界には数千の言語が存在します。

多くは親戚の言語があり、「どの言語とどの言語が近いか」といった系統樹などは社会の教科書にもよく載っています。

では、「文字」はどうでしょう? これらは言語の系統樹と一致するのでしょうか?

結論から言うと「No.」なのです。

 

本書は「文字」の系統樹から世界の言語を眺めてみるという試みです。

50種類近くの言語と、その言語を表記する文字を紹介した上で、それが多言語の文字とどういう関係にあるのかを明らかにします。

「言語の系統樹と文字の系統樹が一致しない理由」には様々ありますが、本書を読めばそこら辺の事情もよく分かります。

各言語は見開き1ページで非常にコンパクトに解説されていますが、「それぞれの言語ごとに別の専門家が解説を書いている」という極めて贅沢な構成になっております。

東京外語大、恐るべし……

METHODS ――目次

ギリシア文字の系譜(ギリシア文字 キリル文字 ほか)

アラム文字の末裔たち(ヘブライ文字 アラビア文字 ほか)

ブラーフミー文字の子孫たち(デーヴァナーガリー文字 ほか)

漢字の一族(漢字 かな文字)

 

RESULTS ――所感

「文字言語」が持つ多様で芳醇な世界を垣間見ることが出来ました。

書籍内で紹介されている言語の種類はマインドマップを覗いてみてください。

私自身、今までに学習してきた外国語が英語・ドイツ語・ラテン語・スペイン語といった「ラテン文字の言語」に偏っていたので、本書で初めて出会った「ラテン語以外の文字」の多様さに驚きました。

これまで私が「日本語の特性」だと思っていたものが、「単にラテン語が備えていない特性であるに過ぎない」と気付かされることも多々ありました。

「それなりに知っていたつもり」だった日本語に対する見識も深まる、というのは多文化を学ぶもう一つの意義ですね。

 

ただ、「日本語」の項に関してはイマイチ……というか、はっきりと他の本を当たることをおすすめします。

たとえば、編者の町田氏が巻頭ではっきりと「漢字は表意文字ではなく表語文字」と今日的見解を示してくれているにも関わらず、金田一春彦氏の古い記載に従って「漢字は表意文字」としています。他にも、「同じ音節文字を2種類も使う言葉は、おそらく日本語以外にない」と……アルファベットの大文字・小文字はどこへ?

日本語学習者の外国人にこの項を書かせたのはどうしてなんでしょう。全体的に金田一春彦氏の『日本語』の受け売りなので、この項に関してはホトンド読む意味はありません。

ひとまず他の項については、非常に満足の行く内容でした。

 

最後にコスパの話を。

「世界の言語図鑑」みたいな本はどうも高くなりがちですが、本書はたったの1800円。

それでいて全てに画像がついていて、ほとんどの項はその言語の専門家が執筆しています。

こんなに贅沢でコスパに優れた本は他に無いと思います。

小図鑑として手元に置いて眺めるだけでも良し。読み物として通読するも良し、です。

CONCLUSIONS ――結語

「世界の文字を眺める本」として、最後まで楽しく読み切れる入門書でした。

「こんな言語がある」「こんな表記がある」といった話から、言語・文字・世界の国々への興味を広げる足がかりとして、本書はピッタリの「チュートリアル」になることと思います。

「世界の言語」を知ることで、普段使う母国語や英語についても新しい視点を得られました。

こんな人にオススメ

★言語に興味がある

★文字に興味がある

★世界史や地理が好き

 

町田 和彦(編):

図説 世界の文字とことば.

河出書房新社, 2014/8/7

 

 

 

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木村勝哉

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