ウェブはバカと暇人のもの
光文社新書, 2009/4/17
いきなりアカウント消したので驚かれた方もいるかも知れません。
最近この本に近いことをよく考えるようになっていて、「いつ辞めようかなー」と思いつつ「まぁノーコストだし別に続けてもいいか」と思っていたのでした。たまたまそこに特大のコストが降ってきたので、「神は言っている、ここでSNSを辞める運命だと」とばかりに踏み切った、というだけの話だったりします。
親身にして下さった方々のために言っておくと、私は結構楽しく生きてます。
詳細は伏せますが、実は1年くらい前から少しずつポジティブな状況変化が来ていて、ネットよりリアルの方が楽しくなってきていたのです。
簡単に言えば、「私の頑張りたい方面での活動がそれなりに認められてきて、『私が自分の時間を使えば使うほど喜んでくれる人たち』『私の提供する知識に良い値を付けてくれる人たち』が増えてきた」という感じです。
これ自体は良いことなのですが、その反作用として「より意義のある形で自分のリソースを配分する選択肢があるにもかかわらず匿名SNSにコストを割いている」ことに一抹の忌避感と「居心地の悪さ」を感じるようになってきていました。
もちろんSNSは「娯楽」であって「コスト」ではないのですが、私の中では気がついたらどんどん「コスト」の側面が強くなってきてしまったんですね。
「あわよくば『未だ見ぬ天才』と繋がり合いたい」という淡い願望を持って始めたSNSですが、当初の私は「攻撃性と時間を持て余しているあまり賢くない人々」への応対コストが指数関数的に増加していくという側面を甘く見ていたわけです。
この社会情勢でリアル対人交流が減ってしまったこともあり、最後の踏ん切りが付かずネットのコミュニケーションにだらだらと居座ってしまいましたが、実感としては「意思決定自体はとうに済んでいて、あとは評価関数が特定の値を割り込んだら打ち切る心算になっていた」というのがこの1年です。
(そういう「吹っ切れた」状態で呟いていたら迂闊にもフォロワーが増えてしまったのは皮肉な事態でしたが)
SNSを辞めた今、「マジで大したデメリットがない」ことを心から実感しているところで、浮いたスキマ時間で代わりに読書や語学や執筆を楽しんでおります。なので心配しないで下さい。
……なんか「ごめん、同窓会には行けません」みたいな言い方になっちゃうね。
まぁでも特定の人々の悪口にならないように言うと大体こういう感じにまとめるしかないんでね。「こっちはまだお前の悪口を言い足りないのに、綺麗にまとめやがって」みたいにイラついてる人もいそうですが、それについては「お前らのそういうとこやで」とだけコメントしておきましょう。
とはいえ、素晴らしい才能を持った方々との交流が失われたことだけは残念です。既に世に残ることを成し遂げつつある偉大な方々、遠からず各界に名を轟かせるであろう方々、そういった面々と他愛もない会話をさせて頂けるのはSNSの最大の魅力でした。
とはいえ、「スタンド使いは引かれ合う」のごとく、私も黙々と自分の山を登って行けばいつかまた高い所で彼らと対話の好機に恵まれることと信じています。
山の八合目あたりでばったり再会したら、またくだらない話をさせて下さい。
あと連絡先知ってる方は今後も気軽に誘って下さい。クローズドなら基本は歓迎です。
忙しければ断るだけなので、お誘いに際しては特にご遠慮なく。
なお、PVがガッツリ減ると見込んで、このブログは細々続けていこうと思います。
読書ブログは「読書に付随した趣味」くらいの感覚なんで基本的にコストに勘定してないし、治安も良いので今のところ特にストレスにはなっていません。
noteはどうするか思案中。他のSNSよりは治安良いんだけど、やっぱ多少なりともソーシャルだからなぁ……。
ちなみに冒頭で紹介したこの本、「イイコト言ってる」系の本ではありません。
「『暇を持て余したバカ』が力を持ちやすいインターネットでは、そういう奴らの対応に無尽蔵にコストを割かれるので、生産的なことをしたい人はあんまりコミットしない方が良い」「そういう構造的欠陥があるので、インターネットにマトモな知が転がってると期待するのもあまり現実的でない」とまとめれば済むような指摘を、これでもかというほど迂遠かつ露悪的に開陳しているだけの本です。
性格悪めのインターネットヘビーユーザーが「あるあるwwww」って言いながらゲラゲラ自嘲気味にページを捲るくらいの読み方なら波長が合って丁度良いと思います。
これ自体も「インターネット的なもの」の文脈に位置付けられる本なのでしょうね。
約10年前に出版された本ではありますが、この10年で「テレビ」の覇権が「Youtube」によって揺るがされたこと以外は、概ね本書で指摘されている状況は据え置きかと思います。
良くも悪くも、インターネットの「客層」はあまり変わっていないことが分かる。
ただ、この著者はその「ロクでもないインターネット」に大なり小なり好意を抱いていて、その「非生産的なアホらしさ」も含めて愛しているような気配があります。この姿勢は「見切りをつけた」私とは違うなぁと思いながら読んでいました。近著でもこの距離感で続けられているのかどうか、ちょっと気になるところではあります。
★NEXT STEP
Arthur Schopenhauer (原著), 鈴木 芳子 (翻訳)
読書について
光文社古典新訳文庫, 2013/5/14
良い本を読むと「こんなことやってる場合じゃないなぁ」という気持ちが味わえます。
『読書について』は知識タイプの本ではありません。
めちゃめちゃアタマの切れる爺さんのお小言を聞きながら「自分はここまで考えていなかったなぁ」と思い知らされるような、そんな経験が味わえるコンテンツです。
「過去の無数の賢人たちから薫陶を受けられる」ことは書物の優位性ですね。
狐太郎
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