「お金に煩わされたくない人」がお金を増やすための、地味だけど期待値の高い方法【新書読書】

「お金に煩わされたくない人」がお金を増やすための、地味だけど期待値の高い方法【新書読書】

山崎 元, 水瀬ケンイチ

全面改訂
ほったらかし投資術

朝日新書, 2015/6/12

 

ちょっと前に資産運用のことをTwitterで呟きました。

ツリーごとコピペするのは冗長なので要点をかいつまみますが、

・素人考えで買った個別株の含み益よりも米国インデックスの利益の方が遥かに大きかった

・私にとっては株を頑張るより普通に働いてインデックス投資する方が総合的に利益が大きい

という個人的な所感を呟いたところ、意外と反響があったのでした。

 

もちろん私自身は株に関しても経済に関しても素人なので、理論的裏付けのある一般論などではなく、「私という一人の素人が2,3年運用したらこうだった」というだけの話です。

が、このツイートには4桁の「リツイート」と「いいね」が付き、更に興味深いことには、何十件もついていた引用ツイートの反応は、プロ・アマ問わずほぼ賛同の声だったのです。

 

とはいえ、その一事をもって「インデックス投資は良いぞ」などと語るのはあまりに無責任なので、「多少なりとも自分で理論的な背景を持ちたいなー」と思って読み始めたのが本書です。

 

実は前から買って積んでいたのですが、とあるフォロワーに勧められて今回読みました。

そして、「何故この本を3年早く読まなかったのか!」と後悔しました。

私が時間や金をすり減らして思い知った事柄が、ここに全て書かれていました。

しかも、私が何となく感じていた「あれ? インデックスって強くない?」という印象を、本書は完全に論理的に説明してくれていました。

 

今回の記事では、私から「インデックス投資は良いぞ!」と勧めることはしません。

代わりに本書を読んで頂いて、「本当にインデックス投資は儲かるのか?」とか「どうしてインデックス投資がいいのか?」といった疑問を解消して頂くのが良いかなと思います。

その上で、納得したら私のようにインデックス投資を始めてみては如何でしょうか。

 

インデックス投資は「大きく爆発的に勝つ」ことは無いので、「デイトレードで食っていく」とか「株で一攫千金!」みたいな話のネタとしては全く上がってきませんが、「本職でちゃんと稼げる人が、自分の持ち金を高い期待値で増やす」という時には非常に有力な手段だと感じています。

個人的に、「専門職・技術職で、収入はそこそこあるけど時間はそれほど余ってなくて、お金を増やすこと自体にそれほど熱中しない方で、コストパフォーマンスやリスクベネフィットといった定量的な合理性を意識する人」には本書の「ほったらかし」セオリーのメリットがかなり発揮できそうな印象を受けました。

早い話が「お金は持て余してるんだけど時間は持て余してなくて、余剰資金を腐らせるのは損した気分になるから投資に回してみたくて、でもマネー系の知識が無いので動き方がよく分かっていない、エンジニアや理系資格職」あたりにはピッタリだという話です。

専門職や技術職みたいな頭脳労働職の人たちにとって、「時間」って自分に注ぎ込める最も有効な自己投資だったりするので、「時間を節約できる投資法」というだけで非常に有用ですし、それで期待値も良いと来たら言うことなしです。

他にも色々と理屈はありますが、本書を読んだら私と同じようなスタンスの方は大体私と同じような結論に落ち着く人は多いのではないかなー、という気がしています。

 

また、インデックス投資は期待値が良いというだけでなく「投資初心者向き」という性質も併せ持っています。

・素人でも負ける確率が非常に低い

・少額からでも始められる

・制度上の優遇を受けやすい

・個別株の研究をする前に始められる

こういう利点だけでも、「インデックス投資から投資デビューする」ことは非常に合理的ではないでしょうか。

そして、インデックス投資を始めるために必要な情報がギュッとコンパクトにまとまっているのが本書なのです。

 

社会人1,2年目で「NISAをいつ始めようか迷っている」くらいの方にはまさに上記の理由から本書はうってつけですし、私のように「自分でちょこちょこ動かしてみたけどインデックスが強そうだからインデックスを中心にしようかと思っている」という人の理論的ベースとしても、本書の有用性は高いと思いました。

 

 

★NEXT STEP

バートン・マルキール (著), 井手 正介 (翻訳)

ウォール街のランダム・ウォーカー
株式投資の不滅の真理

日本経済新聞出版, 2019/7/20; 原著第12版

 

山崎氏・水瀬氏の著書の中でも繰り返し触れられている名著。

既に古典に片足突っ込んでる部類の本ですが、改訂を繰り返し現在まで版を重ねています。

インデックス投資に必要な情報とハウツーは『ほったらかし投資術』だけでも十分なのですが、「更に理論的背景を知りたい」とか「投資が面白く思えてきたのでもっと視野を広げたい」という方はこちらに挑戦してみると面白いと思います。

株投資の様々なまやかしをデータで斬るという内容で、投資だけでなく心理学や統計学が好きな人なら非常に楽しく読めるかと思います。

よく言及される「アクティブファンドの大半は、長期成績でインデックスファンドに勝てない」というデータも、本書で紹介されて有名になったものですね。

歴史、経済、心理、実例と幅広く大量の知見がまとめられており最高なのですが、文献リストが無いのだけが残念でした。原著だと文献リスト付いてたりするのかな……

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狐太郎

読んでは書くの繰り返し。 学んでは習うの繰り返し。

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