「ギャンブルなんて損をするだけ」と言う主張がナンセンスである理由【新書読書】

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谷岡 一郎

ツキの法則

PHP新書 1997/7/1

 

 

「これは本当に出版社の手を経た本なのか……?」という不安になるような本が多いPHP新書。

本書も「中公」や「ちくま」だったらまず書籍にならないだろう、という内容なんですが、そのバランスの危うさが逆にいい味になっている気がする。いや、気のせいかもしれない。

 

本書は「ギャンブルはこうすれば勝てる」という「必勝法」の本ではありません

しかし「ギャンブルなんか期待値見たらマイナスなんだからやめときなさい」という「理性的な」本とも一線を画しています。

 

本書は、

「期待値が負なのは分かってる。それでもギャンブルは楽しい」と認めた上で、

「期待値で言えば負けるものなのに、なぜ『楽しい』と感じてしまうのだろうか」

「ギャンブルを最大限に楽しみながら負けにくくするにはどうしたらいいか」

という視点で攻めているんですね。

冒頭の一文が、このスタンスを端的に示しています。

 本書が目指すところは、よりギャンブルを〈大負けすることなく〉楽しむ方法論だ
と考えていただきたい

 

例えば、本書では競馬において「何点も抑える」買い方は非合理的だとしています。

これはTwitterでも議論を呼んでなかなか面白かったところですが、一見玄人じみて見える「有力そうな組み合わせに少しずつ貼る」というアプローチは、素人の「何となく直感で一点賭け」に比べて必ずしも合理的とは言えない……というのが本書から導ける主張です。

何故このような結論になるのか? 気になった方には是非一読を勧めます。

 

 

繰り返しますが、科学的に言えば、ギャンブルとは「勝てない」ものです。

しかし、「娯楽に金を払うこと」自体は一般的な行為でしょう。「ギャンブルは勝てないもの」だから「ギャンブルなど愚か者のやる遊びだ」などと結論づけることは短絡的です。

そう考えると、「『ギャンブルは勝てないものだ』という前提に立った上で、ギャンブルの適正な楽しみ方を提案するハウツー」を模索することは遥かに合理的な発想だと言えましょう。

「自制が効かずにギャンブルばかりやっているアホ」でも「何でも冷静に分析してしまって『アホになれない』賢い人」でもこういう本は書けない……というのが本書の絶妙さだと思います。

 

「全てを合理的にやろうとした結果『バカなことをやる楽しみが奪われるなら、それは総合的に見て『損している』のだから、非合理の極みではないか?」というのが私の価値観なので、この著者の基本スタンスには共感できるところがありました。

要約するならば、客観的な確率論と主観的な効用論の両取りでしょうか。

こういう発想にこそ、「楽しい生き方」のヒントがあるんじゃないかと思う次第です。

 

ただ、ちょっとこう、攻撃的なとこは何とかならないのかなー。うーん。

 

 

★NEXT STEPではなく蛇足

福本 伸行

賭博黙示録カイジ

ヤングマガジンコミックス 1996/9/3

 

典型的な破滅型のギャンブラー。

胸を張れ……! 手痛く負けた時こそ…胸をっ……!

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木村勝哉

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