【書評】音律と音階の科学

【書評】音律と音階の科学

 

小方 厚 :

音律と音階の科学 新装版.

ブルーバックス, 2018/5/16

BACKGROUND ――対象

「物理学者が音楽理論の根本を解き明かす」という、一風変わったコンセプトです。

音階やコードといった音楽理論に物理学の視点で斬り込みます。

本書が出版された2007年の時点では、音楽理論を物理学や心理学の視点で語る本はまだあまりなく、和書では本書が草分けのような存在だったと記憶しています。

十代の私は本書の旧版を読んで、退屈だと思っていた音楽理論の面白さに目覚めたのでした。

最近また読み直したいなと思っていたところちょうど改訂版が出たので、即購入しました。

METHODS ――目次

第1章 ドレミ…を視る,ドレミ…に触れる

第2章 ドレミ…はピタゴラスから始まった

第3章 音律の推移――閉じない環をめぐって

第4章 なぜドレミ…が好き?――音楽の心理と物理

第5章 コードとコード進行――和音がつくる地形を歩く

第6章 テトラコルド――自由で適当な民族音楽

第7章 楽器の個性を生かそう

第8章 音律と音階の冒険――新しい音楽を求めて

RESULTS ――所感

物理現象に過ぎない「周波数」から、どうして「音階」が生まれてきたのか。

そして、その音階のいかなる「数学的性質」が、今日まで多様な音階を生み出すに至ったか。

歴史のロマンと科学のワクワク感が「音楽」というフィールドで遺憾なく発揮されている点は、やはり見事です。

通常の「楽典」と呼ばれる音楽理論の本では、コードの理論や記譜法などが解説されていますが、本書ではもっと根本的な点から音階の成立に迫っているので、逆に自然科学畑の人には馴染み易いのではないかと思います。

そして、物理である「波」の性質から「コード」の必然性や「楽器」の特性に迫っていくアプローチも非常に興味深いものです。

「物理現象としての音楽」というテーマは随所に繰り返し登場します。

なお、新装版に当たっては、構成が読みやすくなったり図が参照しやすくなったりしているだけでなく、新たに盛り込まれている図や表もぼちぼちあります。値段もほとんど変わらないので、今から買うなら新版がオススメ。

個人的にはオイラー格子に感銘を受けました。作曲の補助としてかなり便利そう。

CONCLUSIONS ――結語

何と言っても「音楽って科学なんだ!」という実感が本書の一番のインパクトだと思います。

音楽を「何だかお作法ばかりでよくわからない」と思っている理系の人にも、数学を「難しいし役に立たない」と思っている音楽系の人にも、新しい視点を提供してくれる一冊です。

 こんな人にオススメ

 ★音楽と数の関係に興味のある人

 ★楽器と物理学の関係に興味のある人

 ★作曲や音楽編集に関わる人

小方 厚 :

音律と音階の科学 新装版.

ブルーバックス, 2018/5/16

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木村勝哉

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コメント

  1. わかばめ より:

    マインドマップは面白そうな試みだと思いました!でも拡大できない、残念・・・。
    「物理現象としての音楽」についてはあまり語らずに本書に任せたいのかもしれないけど、倍音が心地いいのって何でなんだろう??こちらは、(物理現象ではなく、)生理的な現象のように思います。

    • 木村勝哉 より:

      ご指摘ありがとうございます。クリックするとフルサイズが開くようにしました。

      「倍音が心地良い」ことの究極的な説明は、結局どの本でも書かれていないと思います。
      「協和」という周波数の関係は物理現象として統一的に説明できても、「協和音がなぜ心地良いか」という協和と聴感の関係は十分な説明が与えられていません。(という質問の趣旨ですよね?)

      本書ではこの点について「何故」は問わず、「ヒトが感じる不協和感」については「被験者が感じた不快感をプロットする」ことで不協和曲線を提示しています。

      • わかばめ より:

        対応ありがとうございます。まとめなおしにとても良さそうですね!

        ご返信ありがとうございます。ともすれば、物理的な調和と、人間が感じる調和には隔たりがあるのかもしれませんね。このあたりを調べてみるのも面白そうだと感じました。