教養としての生物学、発想としての生物学【新書読書】

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本川 達雄

生物学的文明論

新潮新書

2011/6/1

 

目次
第1章 サンゴ礁とリサイクル
第2章 サンゴ礁と共生
第3章 生物多様性と生態系
第4章 生物と水の関係
第5章 生物の形と意味
第6章 生物のデザインと技術
第7章 生物のサイズとエネルギー
第8章 生物の時間と絶対時間
第9章 「時間環境」という環境問題
第10章 ヒトの寿命と人間の寿命
第11章 ナマコの教訓

(今回から紹介する本の目次を入れてみることにしました)

 

本川達雄氏の科学エッセイ集です。

『ゾウの時間 ネズミの時間』と言えば聞いたことのある方は多いはず。

本書はNHKラジオを書籍向けに再録したもので、一般向けにやさしい内容となっています。

 

恥を忍んで告白しますと、私は高校生の頃に『ゾウの時間 ネズミの時間』に半ば挫折し、序盤の何ページかを読んだまま積んでいた時期があります。(2年越しで再読しましたが)

国語も数学も苦手な部類ではなかったと思うんですが……当時はかなり難しく感じました。

よく新書の名著として名が挙がりますが、勧めている人は本当にみんな読めたのでしょうか。

 

……とまあ、そんな理数系の基礎知識が身についていないと難儀するであろう『ゾウの時間 ネズミの時間』とは違って、本書はもっと気楽に読める内容です

しかし子供だましと言うことはなく、巷の生物雑学本よりはずっと含蓄があります。

 

タイトルこそ「文明論」銘打っていますが、中身はそんなに文明を語っていません。

というか「文明」を語っている部分はそんなに大したこと書いてありません(失礼ながら)

「文系の人こそ生物学の素養を持ってほしい」という願望を託しただけかと思います。

実際のところ、それほど「文系向け」というわけでもなく、生物学にあまり馴染みのない人に「生物学はこういう事をやってるんだよ」と紹介しつつ、生物学的な概念について解説を加える本となっております。

要するに生物学が専攻ではない全ての人が対象の本です。

 

話題としては、生物ではおなじみの「共生」から始まり、次第に「生態系」を絡めた生物多様性の話へ、そして第5章あたりからは筆者のお得意の「サイズと時間の生物学」について概観的にまとめられています。

終わりの方の筆者の主観トークは、楽しめるかどうか人によって分かれると思います。

個人的には第六章なんかは「ちょっとそれはどうなの」のオンパレードだったので、そういう所には目を瞑りつつ、生物的な側面の語りだけちゃんと読むのが良いかなと思いました。

 

「著名な生物学者が、生物の雑談をしつつ、時に現代社会に対する思いを語る」って感じで読むと良い感じの本だと思います。

(何度かこういうの書いてる気がする。そういう本好きなんですよね私……)

「文系の人向け」に書いてるような口ぶりですが、生物学が専門でない人が生物学にちょっと興味を持ったら読んでみると良い本だと思います

 

 

★NEXT STEP

本川 達雄

ゾウの時間 ネズミの時間
サイズの生物学

中公新書, 1992/8/1

 

「生物のサイズ」と「生物の時間」における相対性の話題を扱っています。

同様のトピックは『生物学的文明論』でも簡単に扱われていますが、より定量的な議論まで首を突っ込んでみたければこちらの本。理数系の人でゴリゴリの物理・数学マシーンみたいな人は多分これ読んだ方がオモシロイです。

数理的な議論が苦手な人は息切れに注意しつつ、格闘してみて下さい。

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木村勝哉

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