物理現象としての「台風」を勉強してみる【新書読書】

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上野充 (著), 山口宗彦 (著) 

図解 台風の科学
発生・発達のしくみから地球温暖化の影響まで

ブルーバックス, 2012/7/20

 

今回は季節モノを持ってきました。

「台風」という現象一つで一冊語り通すという、なかなかにキマった本です。

 

気象の異端児ともいうべき「台風」

こいつを理解するためには、実はかなりの予備知識が必要です。

中学理科では「高気圧」「低気圧」「前線」といった考え方を習いますが、台風に関してはこれらの基礎知識だけでは全くと言っていいほど説明できません

複数の要因が絡みあって作られる「台風」という一大システムを理解するため、この仕組みを丁寧に解きほぐし、気象学の基礎的な考え方から出発する……これがこの本の前半。

「基礎的な原理から出発して、基本を組み合わせることで複雑なものを合理的に理解する」という論理展開には理系の方々が涎を垂らして喜びそうな美しさがあります。

 

後半はもう少し個別的で日常的な話として、実際の台風や天気予報の話に入ります。

「台風の進路はどんな要素で決まってくるか」とか、「予報が絞りにくいのはどんな時か」といった生活感あふれるトピックですね。

「理科はよくわからないけど天気予報はよく見る」という人は後半の方がとっつきやすく面白いかもしれません。

 

皮肉な話ではありますが、本書を読めば読むほど伝わってきたのは「台風って良くわかんねぇんだなー」という感覚だったりします。

ただ、その「分からなさ」に自分の手でちょっと触れるだけでも、それは意味があることなんじゃないか……なんて思ったりしました。(前にもこんなこと言った気がする)

この本一冊読んだくらいで「台風について予想できるようになる」なんて甘いことは望むべくもないですが、「天気予報の言ってることがちょっと分かるようになる」くらいの御利益は間違いなくありました。

 

この本を最も楽しめるのは、「高校で化学・物理を勉強したけど地学は中学以来触ってない」という理系高校生・大学生あたりかなと思います。

高校理科では地学のカテゴリに入っていた「気象現象」物理や化学の概念で明快美しく説明されているからです。

自然科学が「横の繋がり」を持った学問であることを実感できる好例ではないかと思います。

 

そして、「台風」をきっかけに気象現象に興味を持ったら、以下のような本から更に興味を広げてみては如何でしょうか。

 

★NEXT STEP

古川 武彦 (著), 大木 勇人 (著)

図解 気象学入門
原理からわかる雲・雨・気温・風・天気図

ブルーバックス, 2011/3/23

 

「気象って物理学なんだ!」と初めて私が感激した本。

過去にも書評を書いています。書評はこちら

「気象現象を素朴な物理学的な説明で理解する」というコンセプトは共通ですが、『台風の科学』とはあまり中身がかぶっていないので、両方読むとそれぞれ知識が広がります。

(つまり「台風が一般の気象現象の中でいかに型破りな奴か」ということなんですが……)

ということで、『台風の科学』の前に読むのも後に読むのもオススメです。

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木村勝哉

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