【書評】図解 気象学入門

古川 武彦, 大木 勇人:

図解 気象学入門

ブルーバックス, 2011/3/23

BACKGROUND ――対象

著者の古川氏は気象庁で予報を行っていた気象の専門家。

共著者の大木氏は科学書・教科書の編纂を得意とする編集者です。

「気象学」は高校理科では選択の少ない「地学」に含まれているので、気象については中学の以来ご無沙汰の方がホトンドではないでしょうか。

理系高校生も「物理/化学」選択が多いので、気象学はご無沙汰になりがちです。

そして、本書はそうした人に向けられた気象学入門です。

本書のターゲット、コンセプトについては、冒頭より以下に引用させていただきます。

● 中学校の理科を身につけていれば理解できるように気を配って記述してある。高校物理以上の知識を必要とする場合には、丁寧な解説をしている。

● このため、高校生以上の学生や社会人の誰もが読み進めることができる。

● わかりやすい文章だけでなく、徹底して図解している。

● 通り一遍の表面的な知識の紹介を避け、「しくみ」を「なるほど」と深く理解できるように記述している。

『図解 気象学入門』P.5より

METHODS ――目次

1章 雲のしくみ

2章 雨と雪のしくみ

3章 気温のしくみ

4章 風のしくみ

5章 低気圧・高気圧と前線のしくみ

6章 台風のしくみ

7章 天気予報のしくみ

RESULTS ――所感

 

まさに冒頭に提示されているコンセプトが実現された本でありました。

気象の基礎知識が「わかった」という実感を伴って、納得と共に頭に入ってきます。

中学の理科を思い出すと、気象の分野では「こういう現象があるので覚えましょう」という話が多くて辟易したものですが、本書はそうしたアプローチとは一線を画す内容でした。

というのも、高校理科の「物理・化学」と非常に親和性の高い説明で書かれているのです。

前半の部分では、気体や液体の持つ基本的な挙動からいくつかの原則を導きます。

そこから後半では、温度や密度と関係した大気の挙動に説明がシフトします。

気象の本としては丁寧すぎるほど「ミクロ」の原理原則にページを割いていますが、その原理原則でマクロな現象が美しくも説明し切れているところがこの本の妙味。

「気体のミクロな性質がわかっていれば、ちゃんと説明すれば気象のマクロな原則ももっと本質的に理解してくれるはず」といわんばかりの筆者の信念が垣間見えます。

物理・化学選択だった人こそ、改めて気象学を学んで、気象の面白さを味わって欲しい。

そう思いました。

そして本書は、読み物として面白いだけでなく、リファレンスとしても優秀です。

別の気象の本に手を出しても「この本に戻って来たい」と思うことがしばしばありました。

実は一度図書館で借りて読んだのですが、手元に置きたくなりすぐに自分で購入しました。

順を追って理解させるような明確な流れがあり、その意味で「物語的」。

その一方で、読み終わってみれば、気象の基礎が「網羅的」に俯瞰できています。

CONCLUSIONS ――結語

気象学の専門家と理科教科書作成の専門家の共著である本書。

共著者の良さが遺憾なく発揮された、「詳しく」かつ「分かりやすい」入門書でした。

「知る」より「分かる」が重視され、非常に楽しく読み進めることができる構成です。

そして読み終わってみると、よく範囲をカバーした優れた入門書であることが分かります。

中高の理科で、「物理や化学は好きだったけど、気象にはあまり興味が持てなかった」という人にこそ読んでほしい一冊ですね。

 こんな人にオススメ

 ★物理・数学が好きな人

 ★気象現象の仕組みに興味がある人

 ★気象学の初学者

古川 武彦, 大木 勇人:

図解 気象学入門

ブルーバックス, 2011/3/23

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木村勝哉

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