色彩の心理学
岩波新書, 1990/8/20
「文系の大学生なら新書くらい読むべきだ」
「新書にも色々あるだろう。読めばいいってものじゃない」
「なら岩波新書ならハズレは無い。分からなければ岩波新書から選べ」
……こういうやり取りを見る度にモヤモヤしてしまうのは、
私が岩波でも時々「ハズレだなー」と思う本を引くからです。
なぜAmazonで電子書籍も無く新品紙書籍も品切れ中の本を紹介したかと言えば、その代表例になってもらうためです。
ごめんなさい。先に謝っときます。
本書は、「心理学」と呼ぶのも躊躇われる、
「ゲーテが自分のセンスを述べた色彩論」と「それに対する無批判な筆者の阿諛追従」
に過ぎません。
ゲーテが自身の持論を述べるだけならともかく、第三者が盲目的にそれを肯定していく(ゲーテ以外に文献的根拠も実証的根拠も引いていないのですから、そう言わざるを得ません)だけの内容に、何の学術的意義・実用的意義を見出せばいいのでしょうか。
一例として、本書から一文を引用します。
印象主義は英語ではインプレッショニズムで、つまり外から内(イン)へと入って来る光を描くのであるが、それを感覚のレベルで受け止めてしまうのである。感覚というのは心理的と言うよりは生理的であり、客観的、非個性的である。つまりリアリズムである。 ―P.118
1.これを読んで拒否反応が出た方。おそらく私と同様の反応です。この本は勧めません。
2.これを読んで分かったような気がした方。試しに自分の言い方で言い直してください。
2a.言い直せないあなたは「分かったつもりになりやすい人」です。同様に薦めません。
2b.自分の解釈で言い直せる方は肌に合う可能性があります。正気が保てればどうぞ。
自然科学(心理学)の心得があるほど「モヤモヤ」と「イライラ」が溜まりやすい本だと思います。
「この本の『本体』は『レトリック』なのでは?」という思いが読めば読むほど募っていく……。
色彩心理学や認知科学のような内容を期待すると投げ出すと思います。
芸術論としてならギリギリ許せるけど、やっぱりこのタイトルは許せない……。
★NEXT STEP
今回はありません。
気が向いたらこちらの記事をどうぞ。
狐太郎
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