科学的に突き詰めた先にある、「美味しいものは美味しい」という結論【新書読書】

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古賀 邦正

最新 ウイスキーの科学
熟成の香味を生む驚きのプロセス

ブルーバックス, 2018/2/15

 

ウイスキーが好きなんです。

私は全く量が飲めないので、「すごく美味しいものを少しだけ飲む」という方向で最適化して来て、たまたま辿り着いたのが「ウイスキー」だった、という感じです。

もちろんビールやワインも場や食事に合わせて飲みますが、自宅で一人で飲むのはウイスキー。

一人でちびちび飲んでも長期保存が効くし、割り物で色々アレンジもしやすいので、実は自粛期に自宅で一人飲みするのにも向いてるんですよね。

 

この「ウイスキー」という酒ですが、工業化の進んだ現代ですら「土地や人が作る酒」という色合いが強く残っており、伝統芸術のような趣すらあります。

「手間のかかる『○年熟成』なんてやらずに、化学調味料みたいなので工業的に『美味しいウイスキー』とか大量生産できないの?」

「『美味しいと思われる成分』が化学的に分かればそれも可能なのでは?」

……とか、私も以前から思ってました。

 

この「ウイスキー」という酒、実はめちゃめちゃ科学で分かっていない事が多い……というのが、本書を読むとよく分かります。

そして、そこにひとすじ「科学によって分かりかけていること」を垂らすのが本書です。

ウイスキーの解説書は銘柄やメーカーの紹介を中心にした本が多く、本書のように科学的側面だけを延々と語る「ウイスキーの科学オタク」的な本はなかなかありません。

 

前半は「ウイスキーの製造工程」の化学的・生物学的な解説。

発酵食品の科学書や『もやしもん』を読んでいた人なら馴染みのある名前が多いかも。

「ウイスキーの蒸留器はなぜ『銅』でなければならないか」という話は個人的にツボでした。

 

後半の「ウイスキーの味の秘密」を語る部分は、不明な部分が多いながらも、現代科学の限りを尽くして「ウイスキーの化学的本質」に迫ろうという気迫を感じました。

「こうやって物質名で羅列されるとロマンが無くなる」という人も世の中にはいるようですが、私はむしろ「まだこんなに良く分からないことが多いのか!」という衝撃を受けました

多種多様な微量の有機物、それらの与える味覚・嗅覚・触覚への効果、そして化学成分同士の相互作用……。

意外かもしれませんが、「様々な成分が混じった混合物から化学物質を検出・弁別する能力」は、機械が必ずしもヒトより優れているとは言えないのが現状です。

 

「『美味しいウイスキー』において、何が『美味しい』を構成しているのか」を解明するのはまだまだ遠い道のりだということが再認識できました。

経験と試行錯誤でそれを作り出す「ウイスキーのマイスターたち」は偉大なんですね……。

「自分の目と鼻で知覚するウイスキー」の奥深さを再確認することとなりました。

 

ちなみに、本書は末尾に参考書籍や総説のリストが付いており、この点も素晴らしいです。

しかし、文中で明らかに特定の論文を参照している部分でフォーマルなCitationをしていないため原著論文に当たるのがやや難しくなっており、この点は惜しいと感じました。

 

★NEXT STEP

土屋守 (著)

ゼロから始めるウイスキー入門

KADOKAWA, 2014/3/14

 

ウイスキーを「飲む」上での基礎知識について、おそらくもっとも分かりやすく書かれた入門書です。

「最初の一冊」として非常に安定感があって、バランスの取れた内容です。

「ウイスキーに興味があるけど、最初にどう選ぶべきか分からない」という方はこの本から読んでみると良いんじゃないかと思います。

「自分に合ったウイスキーの選び方・飲み方」を心得ると1本1000円前後でも結構楽しめるものなので、「ウイスキー」って実は非常にコスパの良い趣味なのではないかと密かに思っています。

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木村勝哉

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