ハロウィンも近いから誤解されがちな『フランケンシュタイン』について語らせてほしい【新書読書】

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廣野 由美子

批評理論入門
『フランケンシュタイン』解剖講義

中公新書, 2005/3/1

 

8月頃にある方と『フランケンシュタイン』の話をしてから自分の中でフランケンシュタインが再燃してまして。

『フランケンシュタイン』マリー・ウォルストンクラフト・シェリー

原作を読んだり関連書籍を読み散らかしたりしていました。

 

キャラクターとしての「フランケンシュタインの怪物」は、すっかり「ホラー」の文脈に位置付けられていますが、原作を読むと実は「人間が人間を造ること」「科学者がその業の報いを受けること」が主題になっていて、かなり現代的なSFの王道とも言える構造を持ってるんですよね。

実際、『フランケンシュタイン』を「近代的SFの原点」と位置付ける論は多数見つかります。

1831年にここまで先進的な作品が生まれていたことには畏敬の念すら湧きます。

 

「”フランケンシュタイン”って実はあのボルトの刺さった怪人じゃなくて、アレを発明した博士の名前なんだよ」って話は雑学としてよく語られるんですが、「じゃあフランケンシュタイン博士ってどんな人ですか」という点については全く注目されないのが個人的には少し寂しい。

(めちゃめちゃ長々と個人的な思いの丈をここに綴ったのですが構成の上でノイズになるのでバッサリ削りました。誰かそのうち個人的に話を振ってくれたら喜びます)

 

さて、冒頭の新書の紹介をしましょう。

本書のメインタイトルはあくまで「批判理論入門」ということで、「文学作品を論じるためのアプローチ」を幅広く紹介することがメインに据えられています。

個人的に今までこういうタイプの講義を受けたことがなかったので、「文学を読むための道具」が系統的に整理されている様子に非常に新鮮な印象を受けました。

「語り手」や「アイロニー」といった文章技巧から、「精神分析批評」および「ジェンダー批評」といった枠組み的な理論まで。

「文学批評」という掴みどころのない広大な世界を、非常に明瞭に整理してくれています。

 

というわけで主体は「文学の批評理論」の本ではありますが、そうは言っても一冊ずっと『フランケンシュタイン』の話をしているので、「『フランケンシュタイン』の読解本」としても非常に楽しめます。一粒で二度美味しい。

一つ一つの読解法の扱いはあっさりしていますが、様々な「読み解き方」「掘り下げ方」を網羅的に扱っているので、個人的には非常に満足のいくものでした。

 

解説されて初めて気付いたモティーフやテーマも多々あり、本書を読みながら「そんな読み方もあるのか!」と感心しつつ、何度も『フランケンシュタイン』の原著を戻り読みしました。

「フランケンシュタイン本人さぁ、これ実はあんまり懲りてねぇし、なんなら自分のこと悲劇のヒロインみたいにして陶酔してるよね(超意訳)」みたいな指摘にはナルホドと感心しつつ苦笑してしまった。確かに指摘されている根拠を読むと納得できる部分があります。

 

ちなみに「それは……それは言えるんか? こじつけとちゃうんか?」と首をひねるような解釈アプローチもありましたが、それそれで「自分はこの解釈には無理があると思う」という見解も一つの読解。納得は出来なくても参考にはなりました。

 

『フランケンシュタイン』についても「文学の批評理論」についても、この一冊で非常に視野が広がった思いです。

 

★NEXT STEP

武田 悠一

フランケンシュタインとは何か:
怪物の倫理学

彩流社, 2014/9/9

 

より深く『フランケンシュタイン』を掘り下げたい方にはこちらがオススメ。

基本的な批評の用語については解説なくガンガンやってるので、『批評理論入門』を読んでからこちらにステップアップすると難度的にも丁度良いかと思います。

〈異形のもの〉として創造された被造物が人間的な意識をもつということ、モンスターに与えられたこの条件が、彼を神から二重に見棄てられた存在にする。 -P. 82

↑もうこの刺し方だけでも既に最高。自分が何となく良いなと思ってた本質をバッサリと言語化されるの良いですよね。

後ろ1/3くらいはフランケンシュタインに絡めた「SFにおける人造人間」評となっているので、そこは興味がなければ読み飛ばしてもいいと思います。(私はブレランも好きだから面白かったけど)

 

メアリ・シェリー (著), 森下 弓子 (翻訳)

フランケンシュタイン

創元推理文庫, 1984/2/24

 

廣野本でも武田本でも共通して参照している訳書の一つなので一応紹介。

青空文庫の宍戸訳でも特に古臭い感じはしないので、正直青空文庫で十分な感じはします。

一番新しい邦訳は多分だけど光文社新訳だと思う。

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木村勝哉

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