日本における「ピアノ」という文化の特殊性【新書読書】

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斎藤 信哉

ピアノはなぜ黒いのか

幻冬舎新書, 2007/5/1

 

 

「ピアノ」「日本で最もポピュラーな楽器」の一つでしょう。

人によっては「最もグローバルな楽器」と主張するかもしれません。

 

しかし、元から鍵盤楽器が音楽文化と歩みを揃えて発展してきたヨーロッパに対して、「日本におけるピアノの立ち位置」というのは、実はかなり特殊な事情が絡んでいるようです。

端的に言えば、「日本人のピアノ観」「少数の大手楽器メーカーの商業戦略」によって作られてきた側面がかなり大きい、ということです。

本書の著者はこうした「日本のピアノ業界」に、ピアノの調律や営業を通して長年携わってきた人物です。

 

タイトルになっている「黒いピアノ」も、実は「日本のローカルな慣習」の一つ。

どうやら本書によれば、もともとヨーロッパのピアノとしては(一部のステージ用などを除けば)木目のピアノが比較的メジャーであったのですが、初期の日本のピアノメーカーがピアノに「漆塗り」を施した、という歴史的経緯があるようです。

 

その後、工業発展の中で日本のピアノ製造はコストダウンと品質改良を重ね、結果的に日本のピアノメーカー(特にヤマハとカワイ)は世界有数のメーカーになりました。

そして現在では「黒いピアノ」は海外にも多数輸出されています。

そして、このヤマハカワイの2社は高度経済成長の波に乗り、音楽教室などの販売戦略を通じて日本に「ピアノ文化」を築いていったのです。

 

本書ではこうした「日本のピアノ小史」のほか、「日本のピアノ業界の裏話」などが盛り込まれています。

はじめは「ピアノの文化史」の本だと思って手にとった本書ですが、「日本のピアノ文化」について語るエッセイといった雰囲気です。

「ピアノの常識」だと思っていたことが実は結構「戦後の日本ピアノメーカーによって作られた常識」であることがよく分かり、なかなか面白かったです。

 

著者は学術的なバックグラウンドのある方ではないので、世界史や技術史の部分についてはソースが無かったり根拠が弱かったりします。

本書の価値があるのはむしろ「業界を自分の目で見てきた」という生き証人としてですね。

ただ後半の自分語りみたいな部分はあんまり要らなかったかなー……ルポと言えばルポなんですが、後半に行くにつれてどんどんポジショントークの色が濃くなっているような……

 

★NEXT STEP

高木 裕

調律師、至高の音をつくる
知られざるピアノの世界

朝日新書, 2010/11/12

 

こちらも調律師の手による「ピアノカルチャー」トークです。

『ピアノはなぜ黒いのか』が「ピアノ業界の歴史と文化・日本編」だとしたら、こちらは「ピアノ業界の歴史と文化・世界編」という感じですね。

海外のピアニストやピアノ文化の方に興味のある方は、むしろこっちから読んだ方がいいかも。

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木村勝哉

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