ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない【新書読書】

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漆原 直行

ビジネス書を読んでもデキる人にはなれない

マイナビ新書 2012/2/24

 

いつも書評ブログの記事タイトルは本の一行キャッチコピーみたいにしてるんだけど、このタイトルには流石に勝てませんでしたね……普通に書名を記事タイトルにしちゃったよ。

この本の内容はこのタイトルに尽きます……というのも呆気ないので、もう少し書きます。

 

おそらく私のブログなど読んでいる方々はそもそも「ビジネス書」という市場に胡散臭さを感じて距離を置いていると思うのですが、本書を読むとなかなか興味深い産業構造の産物だということがわかります。

簡単に言えば、近年の出版不況の中で「不況でも売れる本」として台頭し、市場を拡大してきたのが「ビジネス書」だというのです。

「今で言えば『ビジネス書』の部類に入るような本」は以前からありましたが、それが「ビジネス書」として現在のように一つのジャンルを形成するようになったのは2000年以降だ、というのが筆者の分析です。

 

というわけで本書では、「ビジネス書」という市場が急速にジャンルとして確立していった2000年前後を起点に、出版業界の動向や流行を分析しています。

有象無象の蔓延る「ビジネス書」というジャンルを、よくこれだけ俯瞰してまとめたものだと感心します。古典から流行り物、自己啓発からアヤシイ科学まで、よく網羅しています。筆者はよっぽどビジネス書が好きなんですね。

タイトルこそ挑発的ですが、「『ビジネス書』とは何か?」という題で出しても良かった内容だと思います。

 

2013年出版の本なので直近10年ほどの動向が盛り込まれていないですが、印象としては現在のビジネス書市場も黎明期の2000年頃から2010年までの動向の延長線上にあり、本書での分析は現在も通用する部分が多いと思います。

特に面白いのは、「ビジネス書」というジャンルの確立によって「ビジネス書の著者」が量産され始めたという指摘。

かつてのビジネス書(というジャンル名も無かったと思いますが)は、「『ビジネスで何らかの成功を収めた人』がノウハウを本にする」という形が多かったようですが、近年では「『ビジネス書を出す人』として自分を確立したがっている人が本を出す」状況になってるんですね。

「『ビジネス書をたくさん売り上げた』ということが最大の業績」でしかない著者が出す「ビジネス書」って、冷静に考えたら何かおかしいですよね。

これは「ビジネス書市場」の拡大と、「粗製乱造でも良いので売れるジャンルはたくさん本を出したい」という出版社の思惑と、「『何者かになりたい』という人の需要」が巧妙にマッチしたことで生まれた状況だと思います。

 

このように前半は非常に面白かったのですが、後半は蛇足気味な印象でした。

「ビジネス書に浸ってばかりだとこんなことになるぞ」という個人のエピソードやふわっとした説明が並びますが、主張を強化するために似たようなことが何回も繰り返し書かれており、読んでいてややダレます。

 

最後に。タイトルはトバシ気味ですが、筆者の真意はおそらく「ビジネス書を読むな」ではありません。(というか、ここまで読めば嫌というほど筆者の「ビジネス書愛」は伝わります)

最後の行から抜粋します。

ビジネス書ばかり読んでいても、デキる人には絶対なれません。

この「ビジネス書ばかり読んでいても」というのが要点なのだと思います。

 

本書の中で筆者は、折につけて「硬派な本」について推しています。

・分かりやすい「仕事術」みたいな本にばかり飛びつかず、ちゃんとした経済や科学の本を読め

・自己啓発まがいの本を読むにしても、わけの分からん奴が書いたものをたくさん読むくらいなら、その源流である『7つの習慣』『思考は現実化する』あたりを先に読め

この辺りを汲み取れれば、後半はほぼ読み飛ばして良いんじゃないかなと思います。

 

「ビジネス書」を普段一切読まない人には「こういう世界もあるんだなー」という感じで、知らない世界を知るための参考になる本だと思います。

「ビジネス書」に浸かって意識の高い読書をしちゃってる人には解毒剤として普通にお勧めします。

 

なお、巻末には参考文献のリストがありますが、文中で触れられている重要書籍がリファレンスとして列挙されておらず、この点はやや不親切。

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木村勝哉

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