ネットを捨てよ、書へ戻ろう【新書読書】

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杉山 登志郎

発達障害の子どもたち

講談社現代新書, 2007/12/19

 

 

「発達障害」を専門とする臨床家の手による、一般向けの概説書です。

このトピックは喧々諤々ですが、インターネットでは本当に好き放題に言われているので、「何か一つでもマトモな書籍を紹介しなければ」と以前から思っていたところです。

 

かねてより診断基準や呼称が入り乱れて混沌としている「発達障害」ですが、本書の中では以下の4グループに分けて概観しています。

第一グループ:精神発達遅滞、境界知能
第二グループ:知的障害を伴った広汎性発達障害、高機能広汎性発達障害
第三グループ:注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)、発達性協調運動障害
第四グループ:子ども虐待

この分類に基づいて、それぞれの「性質や傾向」「合併するとどうなるか」といった論じ方をしています。

総論として、個人的には非常に非常に見通しの良い考え方だと感じました。

 

いわゆる「教科書的」な網羅性や文献的踏み込みには欠けるものの、病因や基本的性質に始まり典型的症例の紹介から現実的な対処法まで広く扱っており、一般書としては非常に充実した内容です。

総論から各論までカバーしているという見通しの明瞭さも、専門家ならではの筆致。

これ一冊で「発達障害」という広大な世界を、浅く広く概観できると言っていいでしょう。

2007年出版の本なので、現行の「DSM-5」は本書に反映されていませんが、本書の「大枠の考え方」はディテールな区分や基準が変わっても通用するものではないかと思います。

(DSM-IV→DSM-5でどう変わったか気になる方は鷲見先生の総説をどうぞ)

 

「発達障害同士の合併」「発達障害と被虐待児の類似性」などは近年になって着目されやすくなったトピックですが、既に本書では明確に言及がされており、臨床家たる筆者の「目」の良さに唸らされます。

 

メディアやSNSの影響から「発達障害」には偏ったイメージがつきまといやすいですが、「ちゃんとした知識」を手にしたいなら、まずは本書のように十分な知識を持った専門家が中立かつ冷静な視点から書いた本を参考にするのが良いんじゃないかなと思います。

そういう意味で、本書は発達障害の基本的知識を押さえるための「一冊目」として堅実です。

 

★NEXT STEP

鷲見 聡

発達障害の謎を解く

日本評論社, 2015/3/16

 

発達障害に関するここ数年の研究的知見がコンパクトにまとめられています。

内容は大きく分けて、「疫学に関するもの」「原因(遺伝要因・環境要因)に関するもの」「診断に関するもの」が主です。

提示されているデータは調査や論文に則って述べられており、仮説的なものについては仮説であることが明言されているなど、極めて科学的です。一昔前に有名だったデマなどについても、科学的に否定された経緯が説明されております。

扱っている知見は教育や医療や学術で発達障害に携わる人向け想定しているような節があり、発達障害の当事者や保護者が実践的に活用できるようなものを期待すると期待はずれかもしれません。

「発達障害について適切な知識を得たい」人にとっては極めて良書と言えると思います。

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木村勝哉

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