AIサービスを活用した英文メール高速作成術

AIサービスを活用した英文メール高速作成術

前回の記事の続編……ではありません。(ごめんなさい、意外と長くなって公開が遅れてます)

 

なのにまたエーアイ関連の記事です。

最近エーアイのことを書いてばかりいるのは、部分的には「余暇をエーアイ遊びに費やしすぎている」という嘆かわしい状況に起因しています……現代人は忙しすぎる。

 

日進月歩どころか「秒進分歩」くらいの勢いで新サービスのリリースが続いているAIサービスですが、個人的に一番助かってるのは英語のメールだったりします。

自分用のミニマムなルーチンは固まったし、この手法自体は会話AIの性能が上がっても長く通用すると思うので、今回記事としてまとめて共有することにしました。

 

なお、今回使うサービスは

必須:ChatGPTまたはBing
あると便利:DeepL
お好みで:Grammarly

となっています。

いずれも無料版の範囲で大丈夫ですし、最終的にはChatGPTだけで完結させることも可能です。

 

要件を明確化する

まず「何のために送るメールか」を明確化します。

基本的には

①自分は何者か(初見じゃなければ省略可)
②何のためのメールか
③相手からどんなレスポンスを期待するか

の構成で考えれば良いでしょう。

 

今回はサンプルとして「春休みを利用して海外旅行に行く大学生が、興味のある大学の研究者に研究室見学を申し入れる」というシチュエーションを想定してみましょう。

つまり、条件はこんな感じになります。

①自分は何者?→相手の研究に興味がある大学生
②何のためのメール?→研究室訪問の打診
③期待するレスポンスは?→見学の可否・日程の絞り込み

 

ここからはメールの作成手順が2つのパターンに分岐するので、お好みでどちらか自分に合っていそうな方を選んでください。

一つは「仮のメール文面を自分で簡単に書く」という方法。

こちらは「仮文面自作パターン」とでも呼びましょうか。

 

もう一つは、「条件を列挙してそれに沿う英文を書いてもらう」という方法。

こちらは「条件提示パターン」と呼びましょう。

 

不慣れなうちは「条件提示パターン」の方が簡単に見えますが、慣れてくると「仮文面自作パターン」の方が意図に近い文章を少ない試行数で得られるようになってきます。

なので、個人的には「仮文面自作」パターンをオススメします。

「仮文面自作パターン」で慣れてくると、「簡単なメールならAIを通す必要すらなく書けるようになる」という副次効果もあります。

つまり、このプロセス自体が「英文メールを書く訓練」の側面を持つということです。

 

今回はとりあえず両方のパターンで書いてみましょう。

 

ChatGPTに流し込むプロンプトを作る

さっきの条件を元に、ChatGPTに流し込むためのプロンプトを書きます。

サクサクっと日本語で書いてDeepLにかければオッケーです。

 

「仮文面自作パターン」だとこんな感じでしょうか。

本文が出来上がったら、冒頭に

Please refine the following email.

と入れてChatGPTに渡しましょう。

ハイフンや改行を挟むと命令と文面が区別しやすいようなので、私はいつも入れています。

ChatGPTでもBingでも改行は「Shift+Enter」で可能です。
(たまに間違えて普通にエンターを押してしまい完全に虚無メールを作成させる事故が発生しますが……)

なおBingでも概ね同様のことが出来ますが、Bingは弱体化されてから明らかにChatGPTに劣るので(2023年3月25日現在)、無料版の3.5でもChatGPTを使うことをオススメします。

 

さて、次に「条件提示パターン」でやってみましょう。

手順はほぼ同じですが、タネとなる左側の日本語のテイストが違うことに注目してください。

 

日本語の文体は「日本語としての自然さ」を意識する必要はありません

和文としての質よりも「機械が英訳しやすい和文」にすることを心掛けます。

さっきのと違って人称にちょっとブレがありますね。

このようにDeepLは人称がよく狂うので、最初からしつこく主語を入れるよう工夫して、その上で意図と違う人称が挿入されている部分を自分の目で見つけて修正する必要があります。

今回は人称を「You(あなた)」で統一しましょう

最後2文の人称をI→Youとします。

「I(私)」で統一することもおそらく可能ですが、ChatGPTに「あなたは○○です」と宣告してロールプレイ(なりきり)をしてもらうノウハウは色々と知見が蓄積されてつつあるので、他の応用との連結を考えると「あなた」にしておく方がベターかと思います。

 

そこまで出来たら、冒頭に

You have to write an email in the following situation.

と入れてChatGPTに渡しましょう。

なお、ここまで英文を作るためにDeepLを使っていましたが、どちらのパターンでもこのステップでChatGPTに通して英文は校正されるので、実は一歩手前では質の良い英文でなくても問題ありません

つまるところ、手打ちでざくざくと雑に英文を書いても、要点が含まれていればオッケーなわけです。

 

ということで、最近の私はこのステップはDeepLすら使わず適当に手打ちで書いてます。

慣れてきたら、「1.要件の明確化」を頭の中で済ませて、「2.プロンプト」を直接ChatGPTの小窓か手近なテキストボックスで書く……というのが一番簡単で早い方法だと思います。

メール文面や条件文の冒頭に付与するプロンプトが非常に簡素なものとなっているのも、これと連動した最適化です。

メール用のプロンプトをどこかに保管してコピペ方式にするのが煩わしいので、上記の2つの文だけ丸暗記(と言うほど大したものじゃないけど)しておいて手打ちするのが最も簡潔で手っ取り早いのです。

 

意図に沿わない部分を修正する

さて、ChatGPTからメールの例文が上がってきましたが、ここで改めて中身をよく見てみましょう。

大体同じ感じのメール例文が出てきたので、以降は最初に出した「仮文面自作パターン」の方だけを例に取り上げて見ていきます。

 

まず最も気を付けること「内容的な問題」です。

簡単に言うと、「さらっと嘘をまぜてくることがあるので気を付けてね」ということ。

ChatGPTは気が利くのですが、気が利きすぎて「メールとしては良い流れになるが事実には反する記述」をねじ込んでくることがあります

これを最優先で排除する必要があります。

見たところ、今回の文では内容が変わっていたり情報を勝手に足し引きしたりは無さそうなので、ここは合格として良いでしょう。

 

自信が無ければDeepLで再和訳をするという手もありますが、この再和訳の方がトンチキになっていることもあるので気を付けてください。

(冒頭の”I hope this email finds you well.”は英文ではごく一般的に使われる無難な書き出しですが、再和訳では意味の通らないセンテンスが生じています)

「正しく英訳されているかどうかは再和訳で判断」をオススメしているインフルエンサーも見かけますが、「出来上がりの英文を普通に自分の目でチェック」するのも慣れれば労力は大して変わらないし、何より堅実なので、個人的には英文を自分の目で確かめる方がオススメです。

 

次に、「修辞的な問題」をピックアップしましょう。

「これはちょっと言い過ぎだな」「ここまで華麗な文を自分のメールとして送るのは気が引けるな」という部分がいくつかあると思います。

「どう頭を捻っても自分からこの英文は100%出てこないだろ……」と思う部分を消すか修正するかして、「自分が言いそうな英文」に直していきましょう。

「良い英文」なのは本来良いことなのですが、あまりに華麗な筆致だと「代筆かコピペだろうな」感が滲んでしまいますから、多少拙くても自分に馴染んだ言葉遣いにパラフレーズしといた方が良いです。実際の会話での英語能力とあまりに落差がありすぎるのも気まずいでしょう。

 

裏を返せば、ここで「自分ならここはこのくらいの言い回しにするかな……」というフィルターを通すことで、「一度はAIを通して書いたメール」が再び「自分の書いたメール」に変じるとも言えます。

なので、内容の修正より優先度は低いとはいえ、私はこのステップを必ず入れます。

 

全体に渡って非常に問題が多ければ「もう少し簡素な文体で(rewrite it in a simpler style)」とか「学生らしく書いて(Keep the rhetoric to teenage student-like language)」とかで要求を足して全文リライトさせるのも手です。

が、プロンプトいじりをやっても大抵は一発で良い感じになることは無く、気が付くと延々ガチャを回し続けるような状況になりがちです。

「問題」が数えるほどであれば、少し人間側の認知負荷が高くてもマニュアルで気になったところをいじる方が結果的に早いです。

 

そこで、局所的な書き換えならDeepL Writeに流し込んでパラフレーズしてもらうのが一つのオススメ。

例えば「found the research conducted in your laboratory to be of great interest.」なんかは日本人としてはあまり自然に出てこない言い回し。

「I am very interested」くらいでいいんではないでしょうか、というDeepL Writeからのオススメ。私もこのくらいの方が日本の学生のメールとしてはしっくりきます。

 

また、DeepL Writeに頼らず自力で手打ちして直すという手もあります。

手打ちで直した時にはGrammarlyくらい通しとくと良いですね。

なお、ここでGrammarlyを使ってみると分かりますが、ChatGPTが出力したままの部分でも結構Grammarlyにダメ出しされることがあります。この辺は「英文としての絶対的な良し悪し」ではなく、AIごとの「クセ」の範疇なんでしょうね。

その他にも気になるところをちょちょいと直したら、冒頭と文末のところに宛先の先生の名前と自分の名前を書いて完成です。

 

 

全体のおさらい&まとめ

今回のプロセスをまとめておきましょう。

1. まず要件を明確化して下書きを作成

2. DeepLで英語化してChatGPTに流し込む

3. 出てきた文をDeepL WriteやGrammarlyで修正

 

概略図にするとこんな感じになります。

 

 

最後におまけとして、練習問題を一つ出しておきます。

今回の記事の手法を使って、以下のようなシチュエーションの英文メールを書いてみてください。

「イギリスから毎月紅茶を輸入している小売業者が、今月届いた分が注文より1ダース少ないことに気付いた。こちらから今月分の代金は既に振り込んでしまった。早めに確認してほしいが、在庫は現在それほど逼迫していないので、足りない分は来月分の卸しと一緒に送ってくれてもいい」

慣れればこのくらいのメールも3分とかからず書けるようになるはずです。

 

我が身を振り返ると、初めて海外の教授にメールを書いた時には、「英文メールの書き方」みたいな本を探してきたり、言いたいことに近い例文を探し回ったりして、一通書くのに半日ほどかけた記憶があります。

「英語を母語に持ち、欧米の手紙の文化圏に育っていれば、こうしている間も研究や読書に時間を使えるのになぁ……」と恨めしく思いました。

これからの世界、道具の発達によって「言語格差」が縮小していくのなら、それは良いことだと私は思います。

 

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狐太郎

読んでは書くの繰り返し。 学んでは習うの繰り返し。

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