【雑記】本を読んだら考える③  本の残し方について

【雑記】本を読んだら考える③  本の残し方について

佐藤 優
読書の技法
東洋経済新報社
2012/7/27

 

今回は三連記事の3本目です。

1本目と2本目はこちら。

【雑記】本を読んだら考える①  本の選び方について

【雑記】本を読んだら考える②  本の読み方について

 

「読む準備」「読む過程」と来て、今回は「読んだ後」の話です。

「本を◯冊読む」ということ自体が目的になっている人でない限り、読書の主たる意義は「取り入れた知識や思想を後に活かす」ことだと思いますが、読後にたった数%程度のエフォートを付加することで、本の内容は何倍も思い出しやすくなります

意外と多くの人が「読んだら終わり」にしていると思いますが、読後に「もう一手間」をかけないのは勿体無い、というのが私の体感です。

 

なお、私が読む本は科学書や人文書が多いので、物語系や文学についてはあまり適用できないノウハウもあるかと思います。

とはいえ、私自身は小説・漫画・映画についても本記事で紹介している方法で一元的にデータ管理しているので、使えないことは無いと考えています。

時には面倒を感じて色々と簡略化したりアレンジしたりしてきましたが、「今のところこんな感じに落ち着いたよ」ってノウハウを紹介したいと思います。

 

読んだ本を振り返る

前回の「本の読み方」と一部かぶりますが、読み終わった後に自分の中で「この本はこんな本だったな」という振り返りをやります。

「間を開けずに一度おさらいする」というのは記憶の心理学的知見からも推奨される定着法で、これを読後にちょっと挟むだけでも、その後に頭の中に残る内容がグッと鮮明になります

 

本を読み終えたら、私は必ず以下の二点を自問しています。

①この本が一番伝えたい主張は何だったか(筆者にとっての重要ポイント)

②この本で自分にとって価値がある部分はどこだったか(自分にとっての重要ポイント)

 

「本」というパッケージの偉大さは「また参照したくなった時に、その本が手元にあれば同じ情報に当たることが出来る」ところにあります。

つまり、「書いてあったこと」を一言一句アタマに入れる必要は無いのです。代わりに、「この本にはこんな感じのことが書いてあった」という「紐付け」をしておくことが重要になります。

「その本に書いてあった大事なこと」を明確に意識してから本棚に戻すことで、必要な時に「そういえばあの本があった」と思い出せる確率が上がります

「この本が何を語っている本だかよく分からなかった」とか「この本を再び開いて利用する状況が想定できない」という状態で本棚に戻すようでは、はっきり言って「読まなかったのと同じようなもの」です。

 

振り返りの段階で「漫然と読んだけど、結局この本がどんな本だったのか一つも言語化できない」と気付いたら、手間を惜しまず30分でも1時間でもかけて再読しましょう

「この本については、今の自分に出来る限りまで把握し、総括した」と感じられる状態まで持っていったらオッケーです。他人と比較する必要は無いので、「それがどのくらい正しいか」はそこまで厳しくしなくてもいいと思います。

 

例えば、3年後に同じ本を再読して、「過去の総括」が勘違いだったと気付いても、それはそれで良いのです。

後で参照した時に「大事だと思った記述だけど大したことなかったな」と思ってもいいです。

むしろ「後でその本を開く機会」があったのなら、その時点で「初読時の振り返り」は立派に役目を果たしたと言えるでしょう。

 

とにかく、「その本を読んだことで自分の中に残ったもの」を意識化することが肝要です。

ここでまとめたことは、次の「語る」の段でも生きてきます。

 

読んだ本を残す

簡単に言えば「読書ノート」です。

本は本のまま再読しても良いのですが、「本から抽出したエッセンス」や「『これは』と思った情報」はひとまとめにしておくと後で探す時に便利です。

(小説やエッセイなどの娯楽書を中心に読んでいる方はここを飛ばしてもいいかもしれません。特に小説は流れの中で読んでナンボなので、「抜き書き」は後で読んでも微妙な感触にしかならないことが多いです)

読書ブログをそのまま読書記録として兼用している方も多いようですが、私はアウトプットとは別に読書ノートをつけています。

というか、私の場合は読書ノートが先で、読書のブログ記事にはその加工品を出しています(後述)。

 

「読書ノートに何を書き留めるべきか」という点では、色々なハウツー本が色々なことを言っていますが、

・読了日(あるいは読んでいた期間)

・書誌情報(著者、タイトル、出版年、出版社、できれば目次)

・読後のコメント(内容は後述)

この3点は必ず書き留めるのが良いと思います。

書誌情報は几帳面に入力すると面倒ですが、Amazonの商品ページからコピペすればそれほど手間でもありません。

 

上記の3点の情報をまとめておけば、

「こういう感じの話がどこかの本に書いてあったと思うんだけど、何の本だったっけ……」

「去年の冬に読んだ美術論の本だと思うんだけど……」とか、

「ここで名前が上がってる人、なんか見た覚えがあるんだけど、どこで見たんだろう……」

みたいな時に、自分の過去の読書履歴から拾ってくることが容易になります。

このような「振り返るための足がかり」があると、知識の有機的なネットワークが格段に構築されやすくなりますね。

 

それから、SNSやブログをやっている人には、上記のような読書ノートが「アウトプットを効率化してくれる」というご利益もあります。

例えば「今年読んで面白かった科学書10冊」みたいなブログ記事を書くのに、上記のような読書ノートが有用であることは言うまでもないでしょう。

それから、読書家の友人と「最近読んで面白かったSFは~」みたいな話をする時にスムーズに引き出しを開けることが出来ます。

「この辺のトピックについて独学できる入門書とかない?」みたいな相談にも簡単に乗れるようになります。

 

これらは「短期的な振り返り」ですが、もちろん「長期的な振り返り」にも有用です。

上の項では「読了直後の再読」を勧めましたが、「この3ヶ月で読んだ本をざっと振り返る」ような機会を1,2ヶ月に1回くらい設けるのも、個人的には結構いい効果があると思ってます。

ノートを見返しながら「この本はどんな本だったか」を想起することで、「その本の重要部分」が自分の中で再び固定化され、さらに忘れにくくなります。

 

読んだ本を語る

面白いことに、ほとんどの読書本では「読後のアウトプット」を勧めています。

私の読んだ読書本の著者は背景もスタンスも多種多様で、「読書はビジネスに役立たなければ意味がない」と主張する人もいれば、「読書は自分の中で教養として身に付かなければ意味がない」とする人もいたりするわけですが、そういうスタンスの違いがあっても「読んだものをアウトプットすべし」と言う結論はほぼ間違いなく一致しています。これは非常に興味深いことです。

私も最初は人に影響されて始めたのですが、やってみたらかなり効果を実感したので、何度か辞めても結局再開しており現在に至ります。

 

アウトプットの内訳については、前項で紹介した読書ノートの「読了日・書誌情報・読後のコメント」とほぼ同じで良いと思いますが、ブログやSNSだと読了日の代わりにタイムスタンプが付くのでわざわざ書く必要は無いかもしれません。また、書誌情報もAmazonや楽天の商品リンクを貼れば事足ります。

つまり、ブログやSNSなら「読後のコメント」以外には特に頭を使わなくて済むということですね。簡単。

 

そして前項で後回しにした「読後のコメント」ですが、私は以下の3要素を念頭において書いています。

①本の趣旨・要約

②その本から自分が学んだことや感じたこと

③類書と比較したときの優位点・差別化点

便宜的に、人前に出すものは「書評」、個人的に残すだけのものは「読書メモ」としていますが、読後のコメントの基本構造は同じです。

しかも、前の記事の「読み方」を実践していると、このうち①②は特に苦労なく要約できるはずです。

 

というわけで、こんな感じで「読書のPDCAサイクル」をぐるぐるぶん回していくと、全体的に良い感じに本が自分の血肉になっていくと思います。

 

余談

ここからは余談です。

時々プロ人が言う、「職業ライターでもないのに、書評を書く意味なんかあるのか」という意見に対する私見。

 

学習のハウツーとして「使うことを具体的に想定しながら学習した知識は定着しやすい」というものがあります。大雑把に言えば、私が「書評」に期待する第一の効果はこれに近いものです。

要するに、「後でこの本の内容を要約して、良い部分について具体的に言及するぞ」という「アウトプットする心構え」を持っていることで、読書中の「インプットの質」も高まるわけですね。

作家の中には自分の本が評されることに露骨な嫌悪感を示す人もいますが、極論を言えば書評なんて「本の書き手」のためのものではないのですから、「読み手」はあくまで割り切っていきましょう。「私は著者のためでもなく本のためでもなく、あくまで自分の読書のコスパを高める媒介として利己的に書評を書くぞ」とね。

 

上記のような立場から言えば「書評」そのものはほぼ「副産物」なのですが、その「副産物」で少しばかりマネタイズできたり、コミュニケーションツールとして使えたりすることもあるので、各自で色々と転用の方法を考えてみるのは良いと思います。

私はちょっと前だと「読書メーター」とか「本が好き!」とかを使ってました。

私の場合は段々と正直な書評が書きにくくなってしまったので、オリジナルの読書ノートは自分のPCで全く遠慮無く書きまくり、パブリックに出す時にはその断片をちょっとキレイに整えてお出しする……という感じになってます。

書評をWebサービスの投稿メインにする場合でも、元の文章データはワードファイルとかでオフラインに蓄積しておく方が後で便利だと思います。

 

私は今年からすっかり自分の根城に籠もっていますが、良い場所を見つけて「本の感想」や「本から得た知識」をコンスタントにアウトプットしていれば、「知識と好奇心を持った人」と繋がれる可能性は高まります。いま孤独に読書している方は、一度自分の「読書副産物」を上手く活かせる場所を模索してみてもいいかもしれません。

「読書ノート」さえ作っていれば、そこからアウトプットするのはローコストのはずなので、リターンの期待値が低くても試す価値はあると思います。

SNSを辞めた私ですが、読書の繋がりから生まれた人間関係の一部は、今も私の生活を豊かにしてくれています。

 

思いつくままに書き散らしてしまいましたが、3記事に渡って現在の私の読書法を要約してみました。

最初にも書いたように、このスタイルもまだ完成形とは思っていないので、数年後に見返した時に「この時にはこういう読み方をしていたんだなぁ」と感じるかもしれません。

いずれにしても、「情報の管理」も「情報の公開」も非常に手軽な時代ですから、参考になる部分があればどんどん使って欲しいです。

 

鎌田 浩毅
理科系の読書術
インプットからアウトプットまでの28のヒント
中公新書
2018/3/20

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狐太郎

読んでは書くの繰り返し。 学んでは習うの繰り返し。

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